ハミンと僕の3年間の記憶

韓国人の彼女ハミンと、僕との間の3年間に渡る恋の物語です。 内容は全て実話です。 ハミンとの出会いから、僕の交通事故、ハミンがイギリスへと旅立ち離れ離れになった1年間、そして韓国で別れをするまでの僕の恋を描いています。

(5/17) 雪と旅

2月上旬のある日、東京では大雪となった。
天気予報の通り、東京は朝から大粒の雪が降り、ハミンは興奮したままに僕にメッセージを送ってきた。メッセージの内容からすぐに雪にはしゃいでいるハミンの姿が目に浮かぶ。
急遽この大雪の日にハミンに会うことになった。
電車も運休が続き、多くの人がいち早く家に帰ろうとするなか、僕らはこの雪の日に新宿で待ち合わせをした。
お互いダイヤが乱れて大幅に遅れての到着となった。当然のことながら待つのはいつも僕だ。ハミンはニコニコしながら遅れて到着するのが毎回の恒例となっている。
外はもう大雪だ。そんななか2人は遅くまでワインを飲みながらほろ酔い気分。
新宿駅に戻る途中も雪はいっこうに止む気配がなく、この時間に外を歩いている人なんて見当たらない。
高島屋前はもう真っ白で、階段かどうかわからないくらい雪が積もっている。
そうして駅に向かう途中、いきなりハミンは僕に雪をかけてきた。彼女は遊びで雪をかけたりしない。本気だ。ニコニコしながら、そういう一面がある女の子なのだ。手加減なんてしない。
ハミンはどんどん雪を投げてくる。ハミンは一切手加減しない。
さすがに僕も反撃を開始。
2人とも雪まみれになり、そして豪快に転ぶ。子供のように喜び、本気で相手を困らせる女の子ハミン。
僕はハミンと一緒にいて退屈だなんて思うことは一切なかった。一緒にいることに飽きる暇すらなかったのだ。

そんな大雪の次の週末。なんとこの日も東京は大雪との予報が。
もともと予定していたはじめての旅行で、行き先は近場の三浦半島
旅館で温泉入ってのんびり1泊して、横浜で遊んで帰ってくる予定だった。
前日になっても天気予報が変わる気配はなかった。
僕はハミンとドライブもしたくて、金曜の夜には千葉の実家に帰って、翌朝は親の車で東京まで来ることにしていた。
親に、「本当にこんな雪の中大丈夫?」なんて言われて、僕も不安ではあるが、車で旅行に行きたい一心でおもいきって東京へ車を走らせる。が、やはりこんな大雪の中なので、車が動かない。
途中で引き返して、結局電車で行くことに。すごすご車で戻る僕に母親は「だからそう言ったじゃん」とカンカンだ。

予定を変更してハミンとは品川駅で待ち合わせ。
外はものすごい雪の中、電車に乗って僕らの旅がはじまった。もう一面真っ白。こんなタイミングで旅行に行くなんて普通はないかもしれない。
三崎口駅に到着し、予定のバス停に行くもダイヤも乱れてしばらく来そうにない。
大雪の中、なんとかタクシーを見つけ宿に到着。もう仲居のおばちゃんたちは大喜びだ。聞けば、この大雪でみなキャンセルをして、僕らともう1組しかお客がいないようだ。
普通ではない日に旅行に来た僕ら。なんだか普通とは違う旅行になりそうだ。僕らはこの吹雪のなか、温泉に入ってゆっくりして食事をした。
夜は部屋でゆっくり過ごす、予定だった。というのも、部屋が全然暖かくならず、この大雪で空調が一部故障したようでエアコンが効かない。
TVからは停電情報が続々と。すぐ隣の町も停電の様子。
僕らは旅館の方がもってきてくれた2つの簡易ヒーターで布団にくるまりながら夜を過ごす。寒い。すぐそばまでの停電情報もあり、僕らは不安な夜を過ごすこととなった。
夜が更け、翌日は快晴だった。
晴れた天気のなかで見渡す海、そして辺り一面に残る雪はきれいだった。きっと、この日に旅行に来ている僕らしかみることができない景色だろう。
普通ではないから楽しいのだ。僕にとっては、いつも刺激的なハミンとの時間もまさに同じだった。

その後もハミンは仕事が忙しい日々が続いていた。
僕自身も退職する業務の引継ぎ、コウヘイと行っていたサイト閉鎖、閉鎖に伴い旅館のおばちゃんたちへの報告やお礼など、忙しい日々を送った。
僕は退職してから次の会社に入るまでの数日は、父親と一緒に旅行に出かけた。旅行先は屋久島。親と一緒に旅行にするのも十数年ぶりで、お互い大人同士としては、はじめての旅行だ。
実を言うと、最初は父親との旅行を考えていたわけではなかった。ハミンと一緒に行きたいと思い、誘っていたが、どうしても仕事が忙しくて休みがとれないとのこと。
そうしたなかで、父親を誘ったのだ。父親にはもちろんそんなことは伝えずに、いつもの感謝の気持ちというふうにして誘った。何も知らない父親は喜んで一緒に行ってくれた。
3泊4日、男2人の旅行も良いものだ。早朝から屋久杉を見に行ったり、一緒に桜島の温泉に入ったり、ヨットに乗ったり。なんだか普段できない経験ができ、僕はまた東京に戻ってきた。