ハミンと僕の3年間の記憶

韓国人の彼女ハミンと、僕との間の3年間に渡る恋の物語です。 内容は全て実話です。 ハミンとの出会いから、僕の交通事故、ハミンがイギリスへと旅立ち離れ離れになった1年間、そして韓国で別れをするまでの僕の恋を描いています。

(1/17) 出会い 

僕の彼女が日本を離れてから1年が経った。
長く想い続けた時間だった。僕はこの時間で本当の愛を知ることになる。
そして、同時に深く悩み、自分を苦しめることにもなるのだった。

人生とは川の流れのようだ。
穏やかに流れるときもあれば、僕らが気づかないうちに急な濁流に変わることもある。ゆっくりと流れていると、その先には滝で急に落ちることもある。僕たちは大きな流れの中で生きているのかもしれない。
振り返ると僕はこの3年間、この大きな流れの中にいたのかもしれない。

 

僕の彼女の名前はハミン。
彼女は韓国人だ。
まさか僕が日本人以外と付き合うことになるなんて。そして、その恋がこんなにも楽しく、長く、そして悩ませることになるなんて。当時は少しも思わなかった。

あれはもう3年も前になる。ハミンという子と出会ったのは。
3年前の12月7日。日付まで今でもはっきりと覚えている。

その時僕は26歳。
社会人3年目の後半となり、毎日が慌ただしくもやりがいある日々を送っていた。忙しいことが喜びであったし、仕事ばかりの日常で女の子と付き合おうということもあまり深く考えてもいなかった。
半年ほど前に以前の彼女と別れてから、しばらく恋愛はしなくてもいいかな、なんて思っていた。

僕は当時、コウヘイというルームメイトと一緒に住んでいた。お互い部屋は別々だが、会社の同期で1番仲が良かった。僕らはお互い会社に勤めながら、2人で事業をしていた。お互い会社もあることから、一緒に住みながら一緒に仕事をしていた。
小さいながらもこうした事業をやっていたことが、僕が恋愛に積極的にならない言い訳でもあった。

そんなとき、コウヘイの彼女と一緒に年末パーティーをやることになった。
といっても3人だけでは足りないので、コウヘイは小学校からの仲の良い友人を、コウヘイの彼女は女の子の友達を連れてくることになった。
その女の子がハミンだった。

みんなとの待ち合わせは、僕とコウヘイの家の最寄り駅にあるカフェにした。
僕とコウヘイが待ち合わせ場所のカフェに到着すると、店の中からコウヘイの彼女とハミンが現れた。僕はハミンに会った瞬間に恋に落ちた。
ケーキを買い込んで現れたハミンは、元気で、何より可愛かった。
そして僕がこの瞬間恋に落ちたのは、韓国人の女の子だった。これが僕の恋のはじまりだ。

みんなで料理をして、冬らしく鍋をして楽しんだ夜。
僕は少しでも気に入られようとテンション高めだ。
そんなとき、何気なくコウヘイがハミンに聞いた彼氏はいるのという質問。どうやらハミンには彼氏はいないようだった。
僕は心のなかでガッツポーズ。これはチャンスがあるかもしれない。
コウヘイの彼女に言っていた、今は彼女なんていらないよ、なんてかっこつけていた言葉。もうこの段階で崩れ去っていた。

そうしてみんなで楽しんでいると、ハミンの終電の時間を過ぎてしまっていたことに気がつく。当時ハミンは遠くに住んでいて、終電もだいぶ早いとのこと。
そうした状況で、僕はハミンに親切のつもりで言った「泊まっていってもいいよ」という言葉にみんなびっくり。
特に下心もなく言ったつもりではあったが、みなに勘違いされてしまったようだった。
ハミンはコウヘイの彼女の家に泊まらせてもらうとのことに。
駅まで一緒に行って、ここでお別れ。

次の日には僕は早速行動をおこす。
コウヘイとその彼女に怪しまれないように、まずは前日一緒に遊んだコウヘイの男の友達モリヤマの連絡先を聞く。その上で、コウヘイの彼女にはモリヤマの連絡先も聞いたことを伝え、ハミンの連絡先も教えてもらった。
怪しまれずにハミンの連絡先を聞けた。我ながら良い作戦だ。

そこからハミンとのメッセージがはじまった。
ハミンとのメッセージは夜まで続き、翌週には一緒に夜ご飯を食べに行くことも決定。楽しくなってきた。

1週間ぶりに会うハミンに僕はドキドキ。1週間前はコウヘイらと一緒だったが、今回は2人きりだ。
新宿駅で待ち合わせをして、僕の食通の友人がオススしたレメストランへ。
迷うことのないように、僕は少し早く着いて駅からの道まで確認しておいた。準備は完璧。
駅から現れたハミンは変わらず可愛かった。2人で会うことに少し照れているところもあるようだったけれど、僕らはすぐに2人でいることに慣れてきた。
店に到着。雰囲気は最高だ。静かすぎず、かといってうるさすぎない。

僕らははじめての2人だけの食事を楽しんで、そして飲みすぎた・・。
2人でワインボトルを2本空けるまで飲んだ。なんだかお互い緊張していた部分はあったのかもしれない。2人は軽く酔っ払い。ちょっとだけフラフラでもあった。
帰り道は距離がぐっと縮まったように思った。
僕は高田馬場駅まで彼女を見送りに、同じ電車に乗った。高田馬場は彼女の最寄り駅まで出る電車がある。
電車の揺れでバランスを崩すハミン。僕はそんな彼女をそっと支える。(決して下心はないことだけは書いておくことにする。)
自然な成り行きとはいえ、お互いちょっと照れくさい。でもお互い少しだけ、いやだいぶ酔っているから、あまり気にしないようだ。
駅でハミンとその日一緒にいてくれたことの感謝を伝え、お別れ。

終電に乗って帰るハミンを見送り、僕はまた来た道を戻る。
帰りの電車の中での自分は相当ニヤついていたに違いない。ハミンとの2人だけの時間は、想像していたよりもまたずっと楽しかった。僕は彼女の笑顔に魅了され続けた。

家に帰るとルームメイトのコウヘイがパソコンをカタカタ。エンジニアである彼にとってはいつものことだ。
僕は少し照れながら、ほろ酔いの中、少し前までハミンと一緒にいたことを伝えた。恋愛に関して僕はコウヘイとそうした話をしたことがなかった。
恥ずかしい気持ちがあったからだ。

コウヘイは驚きとともに、喜んでくれた。というのも、彼は僕が仕事にしか興味を示さないことを知っていた。
一緒に事業をやっていることもあり、僕が仕事以外の時間を作れば彼の自由な時間も同時に増えることにもなるのだ。
ただそれ以上の話は恥ずかしさもあり、コウヘイとはそこまでの話にとどめておいた。