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ハミンと僕の3年間の記憶

韓国人の彼女ハミンと、僕との間の3年間に渡る恋の物語です。 内容は全て実話です。 ハミンとの出会いから、僕の交通事故、ハミンがイギリスへと旅立ち離れ離れになった1年間、そして韓国で別れをするまでの僕の恋を描いています。

(17/17) 別れ

次の日の朝、ハミンから連絡があった。
この時間ハミンは授業を受けているはずなのに、なんだろう。
聞けば、その日は学校をサボってしまったとのこと。もちろん両親に内緒でだ。
ということで、彼女に誘われるまま新世界というデパートの中にある健康ランドのようなところに行くことになった。
デパートのなかで待ち合わせをし、帽子を深くかぶったハミンがやってきた。

授業をさぼったことを2人で笑いながら話す。僕も会社を休んで来ているのだから、まぁお互い様のようなものだ。
なんだか高校生の恋愛に戻った気分だった。お互い授業を抜け出して、デートに来ちゃったような、そんな感覚だった。

お風呂に入ってからは、2人で休憩。
こうして一緒にいるとなんだかまた苦しくなってきた。一緒にいたくないのではない。こうした関係が続いていくのかわからない怖さを感じるからだ。
お互い悲しくなってきたこともあり、段々とハミンも僕もお互い泣きながら話をする。
僕はできることならハミンとずっと一緒にいたい。
ハミンもそれは同じ気持ちのようでもあった。ただ、ハミンは自分でもやりたいとことがある。特に海外への挑戦ということ。
今も勉強をし、再度留学に向けての準備をしている。明るい未来を見ながらも、ハミンにも不安はあるようだ。
そして、素直に気持ちを表してくれた。
「自分が将来どこにいるのかもわからない。そしていつ勉強が終わるのかもわからない。だから、翔太は私を待たないでほしい。自分の未来に向かって生きてほしい。」と。
僕はハミンを苦しませるのはしたくなかった。ハミンの気持ちも理解をしたかった。
だけど僕にはハミンのいない人生はなかなか考えられなかった。僕の方が弱い人間なのだろう。
お互い泣くだけ泣いたらすっきりしたのか、その後は2人とも笑いながら話ができるようになってきた。
そうしていると、ハミンは夕方1件予定があるようだった。親戚のおばちゃんにイラストレーターの使い方を週1回教えているそう。ということで一度お別れをし、終わったら合流し、夜ご飯を一緒に食べることにした。

僕は、明日は日本に戻る日だ。
久しぶりにハミンに会ったものの、今日が最後の夜だ。僕はハミンがいないこのタイミングで手紙を書いた。
声に出して伝えられない僕の本当の気持ちを、この手紙に正直に書き綴った。


夜になるとまたハミンと待ち合わせをした。
日本にいたときには、僕は待ち合わせのときによくハミンにびっくりさせられた。急に現れて、「わ!」と言ってびっくりさせてくるハミン。
今回は僕の番だ。

待ち合わせ場所に早めに到着した僕は、柱の影でハミンが来るのを待っていた。
到着した彼女は僕を探しているようだ。僕はそろりそろりと彼女の背中側から回り込んで声をかけてびっくりさせようとした。すると彼女は振り返り、早くも見つかってしまった。ハミンには大笑いされ、結局失敗に終わった。

暖かい日でもあったので、結局、食材を買い込んで外で食べようということになった。2人で食材を買い込んで、外で歩きながら食べた。
ハミンは僕を連れていきたいところがあるということで、タクシーに乗って海の近くまで行った。
そこから2人は歩きながら話をし、綺麗なビーチまでたどり着いた。
ビーチの目の前には、東京でいえばベイブリッジのようなライトアップされた大きい橋があり、そこを2人で歩きながら話をした。
明日は日本に戻る日で、ハミンも明日は朝から学校がある。ということで、今回の滞在では最後の時間になりそうだった。
そういう気持ちもあり、なんだか少し重たい気分の僕でもあった。

ハミンはビーチに座って海をみたいと言い、僕らは冬のビーチで2人腰を掛けた。
ハミンはイタリアやイギリスにいる間に、なぜあまり連絡をしなかったのか、どういう気持ちであったのか正直に僕に打ち明けてくれた。
実は、すごく悲しかったらしい。僕のことを思い出すと悲しくなってしまうからこそ、自分で自分を苦しませないように、連絡をしないようにしていたとのことだった。
イギリスにいても、その想いは変わることはなかったようで、寂しくなることも多かったようだ。

僕は、ハミンがどう僕のことを思ってくれているのかという気持ちがわからずにいたこともあり、そうした告白は意外でもあった。嬉しいような、だけれどそうした気持ちをハミンにさせてしまい申し訳ない気持ちだった。
そして、ハミンは言った。
今日で2人の関係をもう終わりにしたいと。

寂しかった。時が止まったようだった。
こうしたことを予期していなかったわけではない。ただ、彼女の口からそうした言葉を聞きたくないと思っていたからこそ、これまでイタリアに行けなかったのだ。
いつかは聞くことになるのだろうとは薄々想いながらも、自分のなかで都合の悪いことは考えないようにしていた。
僕もハミンに自分の気持ちを伝える番だった。
僕は数時間前に書いた手紙を取り出して、読み上げた。

 

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ハミンへ

昨日と今日一緒にいてくれて、ありがとう。
無理やり釜山に来てしまったけど、1年振りにハミンに会えて、一緒にいられて本当に嬉しかった。
これまでとは少し違う複雑な感情ではあったけど、昔と変わらずに楽しい時間を過ごせたよ。

ハミンも1年前と変わらず、きれいで、笑顔も可愛いままだった。
同時に、また少し大人になったね。
海外に出て、いろいろチャレンジして、たくさん経験を増やしたからかな。

この1年間ハミンと離れたのは、もしかすると必要な時間だったのかもしれない。
1年間という中で、神様がおれのことを試していたのかもしれない。
おれはいま確信をもって言える。
やっぱりハミンが大好きで、1番大切な人なんだっていうことを。
一生大切にしたいし、ずっと一緒にいたい。
おじいちゃん、おばあちゃんになっても一緒にいたい。

なんでおれはこんなにハミンが好きなんだろう。好きでたまらないんだろう。
もうこれは変えられないことで、おれの中では運命なんだと思う。

おれはハミンには夢を追ってもらいたいし、満足いく人生にしてもらいたい。
だけど、ハミンにとって1番輝ける場所はどこだろう?
あんまり力を入れずに、周りの期待に応える必要もない。
ハミンには、もう一度だけ日本に戻ってきてもらいたい。
もう一度だけ日本で才能を生かしてほしい。
2月の試験が終わったら、日本でがんばってみないかな。
いろんな経験をハミンと一緒にしていきたいと思ってる。
ハミンの友達も、きっとみんな会えることを待ってるはずだよ。
そして、おれが誰よりも世界で1番ハミンのことを思ってるから。

おれは日本に帰っても、また連絡するからね。
ハミンの声を聞いていたいし、繋がっていたい。

翔太

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ハミンへの僕の愛のメッセージだ。
将来も、心から一緒にいたいと思っている。そして、この1年間離れ離れになったのは、自分にとって必要な時間だったとも思っている。
その期間があったからこそ、僕はハミンを心から愛してると言える。

ハミンは泣いていた。
ただ、ハミンが声を振り絞って言ったのは、僕が次に釜山に来てももう会えないということだった。

釜山の海を目の前に、この瞬間に僕の恋は終わった。


ハミンは駅まで僕を送ってくれるという。
1年前は僕がハミンを空港まで見送りにいったから、今度はハミンの番ということだった。
実はこの2日間、僕らは手も繋いでいなかった。ハミンに断られてしまったからだ。
だが、このときの駅まで歩いていく10分間は2人で手を繋いで、一緒に歩いた。
思い切り泣いてすっきりしたのか、このときの2人はともに笑顔だった。
この2日間ハミンと一緒にいたけれど、何か少し暗さがあった。笑ってはいるけれども暗い雰囲気。
だけれど、駅までのこの10分間は普段の底抜けに明るいハミンだった。
僕らは冗談を言い合いながら、思い切り笑って、昔と同じ時間を過ごした。

駅まできてくれたハミン。
これが、本当に最後のお別れだ。

2人は抱き合い、最後にお別れのキスをした。
改札を通る前に、もう一度抱き合い、本当に最後のキスをした。
2人とも笑顔で手を振って、そして僕は階段を降りていった。

ありがとうハミン。
これでお別れだ。

電車に乗りながら苦しい想いに包まれながらも、僕はハミンへの感謝の気持ちで一杯だった。これまでありがとうという気持ちだ。

そして、その日はほとんど眠れずに次の日の朝を迎えた。
僕はリムジンバスに乗り、ひとり空港まで向かった。
もしかしたらハミンも空港に来てくれているのかもしれないという淡い期待があったが、それは叶えられなかった。

 


あれからおよそ1ヶ月。今日は12月31日。
2016年も終わりに近づくなかか、僕はこれまでの3年間のハミンとの日々をいまこうして書き綴っている。
僕にとって終わった恋だ。

だけど、忘れられない大切な人との記憶。
そして僕の中では忘れてはいけないと思っている。
正直に考えると、この記憶は僕をまだまだ苦しめるんだと思う。だけど、それでいい。
人生の大切な1ページをしっかりと心に留めておきたいから。

 

ハミンとの3年間の話はここで終わりだ。
もし、またこの続きを書くことができたら、そのときはどう続いていくのだろう。
これは誰にもわからない。いつかまた続きを書ける日がくることを僕は願っている。