読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ハミンと僕の3年間の記憶

韓国人の彼女ハミンと、僕との間の3年間に渡る恋の物語です。 内容は全て実話です。 ハミンとの出会いから、僕の交通事故、ハミンがイギリスへと旅立ち離れ離れになった1年間、そして韓国で別れをするまでの僕の恋を描いています。

(14/17) その後の僕

その後の数日、僕は抜け殻のようだった。
仕事でも無理して笑ってみせるけれど、心の中は空っぽだった。
僕に残ったのは虚無感で、不思議にも”苦しさ”というものはなかった。
これまでの数ヶ月間、ハミン出発の日に近づくことを思うと苦しかった。どんなに楽しく一緒に過ごしてもあと数ヶ月、あと数日で一緒にはいられなくなってしまう苦しみがあった。

ただ一方、僕は3年も待てるのだろうか。どんなに数えてもまだ数日しか経っていない。あとどれだけ待てばよいのか。
ハミンが韓国に帰ってからも連絡は続けていた。久しぶりに家族と一緒に過ごしてハミンは安心した部分もあるようだった。
しばらくは韓国の家に住んで、語学の勉強をして留学準備にあてるらしい。
ただ日が経つごとに、だんだんとハミンから連絡が返ってくるまでの間隔が長くなってきた。
一度連絡をしたときには、ハミンからは運転の練習も始めたということも聞いていた。僕も運転気をつけてね、くらいしか言っていなかったが、ハミンが元気に過ごしているのなら僕はそれで良かった。

その後、しばらく返事がない日が続いた。
連絡をしてみても返事がないのだ。
僕はなんだか嫌な予感がしてきた。日本にいるハミンの友達に何か知っていることがないか聞いてみても、彼女らもハミンからしばらく連絡が返ってこないとのこと。
直接連絡する手段がないので、僕はハミンのお母さんがオーナーをしているカフェに電話をかけてみることにした。お母さんに電話を代わってもらえれば何かがわかるかもしれない。
カフェの名前はわかるので、ネットで電話番号を見つけてかけてみることにした。電話が繋がり僕が英語を話すと、電話越しの相手は動揺したようで少し間を置いて、奥で誰かと話をしている。すると、電話を切られてしまった。
もう一度電話をかけてみる。僕が英語を話した瞬間に電話を切られる。次の電話ではもう相手はとらない。僕の番号が拒否されてしまった。
連絡できる手段がなくなってきてしまった。僕は心配でたまらなかった。
もしかしたらハミンは事故にあってしまったのかもしれない。ハミンが運転していると言ったときに、注意するようにもっと伝えておけばよかったのだと後悔もした。

そうしていると、数日経ってハミンから何事もなかったようにメッセージが返ってきた。僕はハミンの身に何事もなく、元気にいることに安心した。
違う国にいるときに、メッセージ一本返ってこないだけでこれだけ心配になるなんて。
そんな僕に、ハミンはもう心配なんてしないでと言った。心配しすぎだそうだ。
僕はハミンの身に何かおきていないか不安だった。ただその状態が知りたかっただけだ。
なぜ、心配する僕が悪いと言われないといけないんだろう。
僕ははじめてハミンに怒った。愛しているからこそ心配する気持ちがなぜ伝わらないんだろう。
なんだか距離が徐々に離れていることを感じ、寂しさが残っていく。
その後もハミンからの連絡は返ってこないことのほうが多くなっていった。

その間、僕はハミンのことを大切に思いながらも、思い出させないくらいまで忙しくしようと思った。
ハミンに次にきちんと会えるのは3年後。僕はそのときまでには立派な男になっていたかった。
そして、僕はこれまで以上に仕事に精を出した。仕事だけを考えるようになった僕は、会社での仕事も順調に進み、責任も増え、自分のチームをもつようになっていった。
そして、会社での仕事以外にも個人としていただく仕事も増え、製造業の企業の海外進出をサポートしたり、企業の顧問として携わることも増えてきた。
立ち止まるとハミンのことを思い出して、弱い自分になってしまいそうな怖さから、僕は精一杯前を向いて、無理やり自分自身を忙しくしてみた。
仕事以外でも、男らしい人が好みのハミンに合わせるように、ジムに通って身体を鍛え始めた。
韓国語のレッスンにも通って勉強を開始してみた。いつか会うときにはハミンを驚かせたいと思ったからだ。毎週金曜日の夜はレッスンの日となった。

ハミンからはイタリアに着いてから一度連絡をもらった。新しい環境で戸惑いながらも楽しんでいるようだった。
ただその後、ハミンから連絡があることはほとんどなかった。
僕は継続して、ときおりハミンには連絡をしていたけれど、あまり連絡が返ってくることもなかった。
ハミンが日本を出発する前に僕に言っていた言葉を、僕はずっと覚えていたからだ。
「私は連絡をしないと思うし、返事が返ってこなくても、翔太は連絡はしてね。」
なんと一方的なことを言うんだと思っていたけれど、僕はそのときの言葉を忠実に守り、ときおり連絡をし続けた。彼女から連絡が返ってこなくても、だ。
友人からは、彼女に翻弄されているように思われ、早く次の彼女を見つけたほうがいいと何度も言われたが、僕はそういう気持ちにはなれなかった。
ここまで一途に1人の女性のことを思うなんて、僕は生まれてはじめてだ。