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ハミンと僕の3年間の記憶

韓国人の彼女ハミンと、僕との間の3年間に渡る恋の物語です。 内容は全て実話です。 ハミンとの出会いから、僕の交通事故、ハミンがイギリスへと旅立ち離れ離れになった1年間、そして韓国で別れをするまでの僕の恋を描いています。

(13/17) 別れの日

遂に、最後の日になった。
朝目覚めると、それまでの晴れ晴れとした気持ちとは違って、悲しさの方が遥かに強かった。
ハミンも今にも泣いてしまいそうだった。
出発に向けて最後の準備を整えると、ハミンを呼んだ。そして僕は1枚の手紙を読み上げた。
ハミンに対する僕の気持ちを全て書き綴ったものだ。

 

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ハミンへ

はじめて出会った日から、もう2年も経つんだね。
初めて会ったのが最近のように感じるし、時が経つのは本当にはやい。
ハミンのおかげで毎日が本当に楽しくて、幸せな時間を過ごすことが出来たこと、すごく感謝しています。
2年前、ハミンに出会えて良かった。

はじめて会った日。はじめて2人だけで食事に行った日。東京タワーではまさか同じ曲を選んだり、深夜の原宿駅で偶然会ったり、雪の新宿で遊んだりした日、最初の頃のことも、いまでも全部覚えてる。
この2年間、楽しい時間を一緒にいつも2人で笑って過ごしてたね。

いつもニコニコ楽しそうにしているハミンと過ごす時間が本当に幸せだった。
いろんな冗談をいって、同じものに喜んで、感動して、だけどときには少し意地悪してみたり、いつもお互いのことを想い合って過ごしたね。

そんななかでも、俺が事故を起こして元気をなくしたときも、救ってくれたのはハミンだった。
本気で心配してくれて、だけどそうして心配してる様子は顔には出さずに、いつものように笑って一緒にいてくれた。
ハミンの笑顔にどれだけ勇気づけられたことか。
俺はあの時に決めた。もう絶対にハミンを悲しませることはしないと。

これからハミンと一緒にいられなくなってしまうこと、正直に言うと、すごく寂しいです。
これまでずっと近くにいたハミンと会えなくなってしまうのは苦しくて、本当はずっとそばにいてほしい。

だけど、これは大事なこと。
ハミンが決めた挑戦。俺はハミンには絶対に後悔をしてほしくないし、夢を叶えてほしい。
何より、幸せな人生にしてもらいたい。
もっともっと大きなフィールドへ羽ばたいてほしい。
だから俺はハミンの新たな挑戦を、心の底から全力で応援します。

3年は長い。
けれど、この間に2人ともいろんな経験をして、いろんな人に出会い、きっと大きく成長していることだと思う。
改めて3年後に出会って、お互いの気持ちがつながっているのであれば、それから先はずっと一緒にいれるように、そのときは結婚したい。

3年という期間はきっと想像以上に長くて、長くて、100%ということは確信できない。
だけど、そうした2人の想いがつながっていたら幸せ。だって3年後でも31歳と30歳、それでもまだまだ若い2人だから。


いままさに、新しい一歩を踏み出したハミン。
きっと、これからたくさんの出会いがあって、楽しいこと、そしてつらいこともあるんだと思う。
ハミンはきっとニコニコしながら、たくさんの友達をつくって、楽しい時間を過ごしていくんだろうな。

がんばってね。
そして、いってらっしゃい。

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僕は泣きながら読み上げた。
ハミンも泣きながら聞いていた。これが僕のハミンへの気持ちだ。
もし3年後、お互いが変わらぬ気持ちでいられるなら、その時は結婚していたいと僕は思っていた。これまで結婚ということを意識することは1度もなかった。僕が結婚を考える日はずっと先だと思っていた。
だけど、ハミンに対しては心の底から思う。ずっと一緒にいたいたった1人の女性だと思った。
この3年でお互いがどうなるかはわからない。
ただ、3年後に会ってそのときに気持ちが同じであったら、もうそれは運命だ。

何かでずっとつながっていられるように、ハミンには僕とおそろいの赤い革のペンケースを渡した。それがこれから旅立つハミンへのプレゼントだ。
そして、一緒に電車に乗り、成田空港へ。

成田空港に着くと僕らは最後の時間を惜しむように、飛行機を見に行ったり一緒にいられる最後の時間を惜しんだ。僕はハミンとの別れを思うと辛かった。
僕ら2人は出発ロビーへと戻ってきて、残り限られたわずかな時間を一緒に過ごした。
ハミンの飛行機は昼過ぎだが、その日の夕方にはコンサートがあるらしい。ロビーにはちょうどリハーサルを終えた演奏者の方々がいた。
もしまだリハーサルをやっているのなら、お別れの演奏として2人で聞けたらと思い、僕は演奏者の方々に声をかけた。
まだリハーサルをする予定があるのかを聞いてみるも、もうリハーサルの予定はないとのことだった。
演奏者の1人の男性は、僕になぜそういうことを聞いてくるのかと逆に質問をしてきてくれた。
僕は素直に、今が彼女と最後の時間であることを伝え、あと少ししたらお別れをしなければいけないことを伝えた。
そうすると、その男性は仲間の方々に声をかけて、僕らのために演奏会を開いてくれると言ってくれたのだ。
僕らは彼らに呼ばれるままに、1番近くの席に2人で座らせてもらった。僕らのためだけの演奏会。
最後の最後に神様が僕らに大きなプレゼントをくれた。演奏をしてくれた方々には感謝が尽きない。
僕ら2人は泣きながら演奏を聞いた。もう2人とも涙を止めることは一切できなかった。演奏している方々も僕らの状況を見て涙しながらの演奏だった。
僕にとって、人生で最も嬉しく、最も悲しい演奏だった。
この曲、時間は一生忘れることはないだろう。
演奏が終わると、遂に最後の時間が来てしまった。
出国ゲートまでハミンと一緒に行き、最後写真を1枚撮ってもらった。2人とも泣きすぎたせいか、目が真っ赤で、目の周りも腫れている。
僕ら2人は出国ゲートそばで抱き合い、最後のキスをした。
そしてハミンはゲートへと向かっていった。僕はハミンが見えなくなるまで見送った。

人との別れで、これほどの苦しさを味わうことはこれまで僕の人生で1度もなかった。
僕はハミンの飛行機が離陸するまで見送ることにした。
最後のお別れ、感謝をして、僕とハミンとの日本での時間は終わった。