ハミンと僕の3年間の記憶

韓国人の彼女ハミンと、僕との間の3年間に渡る恋の物語です。 内容は全て実話です。 ハミンとの出会いから、僕の交通事故、ハミンがイギリスへと旅立ち離れ離れになった1年間、そして韓国で別れをするまでの僕の恋を描いています。

(11/17) 楽しさと悲しさ

そうした日々を過ごしていると、7月にはハミンの韓国での高校時代の友達が日本に来ることに。
僕もハミンに誘われ、3人で花火大会へ行くことになった。待ち合わせは花火会場の一角。2人は先に場所を確保してあるということで、僕は食材を買い込み2人のいるところに向かった。
人混みの中でもハミンをすぐに見つけることができた。ハミンの友達も一緒にいた。ハミンの友達も綺麗な人だった。そして、浴衣を着たハミンの姿もいつもよりまた一層綺麗だった。
ハミンに通訳をしてもらって、友達にも挨拶をして、一緒に花火を楽しんだ。
ハミンを高校のときから知る友達。聞けばその子の彼氏は、今は軍隊で兵役中だそう。付き合いはじめてすぐに兵役となって、頻繁に会うことができずにいるようで、よく手紙を書いて送っているらしい。
その子にとってみれば、こうして一緒にいられる僕とハミンは羨ましいとのことだ。こうして自然体で2人が付き合えるのが羨ましいと。
そう言ってもらえるのは僕も嬉しかった。
だけど、僕の本当の気持ちは違った。
今は一緒にいられるけれど、もう少し先には離れ離れになってしまう運命だから。寂しさが心を支配しているときだって多い。
ともあれ、はじめてハミンの韓国のときの友達にも会えて、僕はまた普段と違うハミンを見ることができた。

翌月の8月には、今度は僕がハミンに友達を紹介する番だ。
僕の高校時代の友達とその彼女とハミンと4人で、かねてから計画していたキャンプの旅へ。
全然心配はしていなかったけれど、やはりハミンは僕の友達ともすぐに仲良くなった。
僕らが向かうのは富士山近くの河口湖
小さいときから毎年家族とキャンプをしていた僕と違って、ハミンははじめてのキャンプ体験らしい。自然のなかで過ごす2日間に楽しみにしている様子が伝わってくる。
2人で一緒にテントを張り、料理をして、自然の時間を満喫した。大量の蚊に悩まされながらも、自然のなかで眠る、それこそがキャンプだ。
真っ暗闇のなかで、テントで一緒に眠る。ハミンはこうしたはじめての経験に少し緊張しているようだ。そんなハミンが愛しく思える。

そうしてキャンプを終え、東京に戻ると僕らはまたいつもの日常に戻っていった。ただ、そうしたなかでも、なるべく一緒にいられる時間を作ろうとお互いしていた。

9月、ハミンは職場の最終出社を終えた。
頑張って働いた2年半。
明るいキャラクターで職場のみんなからも愛されていたようで、ハミンのために、朝まで飲み会を開いてくれたらしい。
ということで、その日にお祝いができなかった僕がいるわけだ。
ま、いいだろう。僕は次の日にでもお祝いができるから。
品川駅で待ち合わせをして、ふたりで向かったのは羽田空港
これから世界へ羽ばたいていくハミンと一緒に飛行機を眺めて、食事をしてお祝いをした。
やはり、こうして後戻りできないところまできてしまっているようだ。
僕の中でも今はもう悲しむことをやめ、残された時間を思い切り楽しもうと言い聞かせていた。

10月に入ると、韓国からハミンのお母さんが日本にやってきた。
1ヶ月半くらいをかけて、2人で日本のあちこちを旅するそうだ。行くのは北海道から広島まで。
ハミンのお母さんは昔は美術の先生の仕事をしていて、今は釜山でも人気のカフェのオーナーだ。2人はこの1ヶ月半の間、日本全国のアートに触れる旅をすることになっている。

この1ヶ月半が寂しいかというと、実のところ僕はそうではなかった。
正直なところ、僕にとってハミンが旅に出ているこの1ヶ月半は心が休まるときだった。
一緒にいると楽しいのだが、それ以上に12月にはこの楽しさに終わりがきてしまうことを思うと、僕は苦しさを感じてしまっていた。ハミンには見せないようにしていたつもりではあったが、徐々に出発の日が近づくにつれて、その苦しさが大きくなってきた。
だからこそ、日本にはいるけれど会えない時間、お互いがそこまで意識をしなくても良い時間というのは、僕にとってその苦しさから開放されるという風にとらえていた部分もあった。

旅の途中では僕の誕生日があり、ハミンはその日には1度東京に戻ってきてくれた。久しぶりに会えたこと、旅を中断して戻ってきてくれたことがありがたかった。
僕ら2人が好きな東京駅が、ハミンが予約してくれた丸ビルのレストランからは、綺麗に見えた。
こうして東京駅を食事をしながら眺めるのは、付き合って数日で迎えたクリスマス以来だった。
食事の最後には、ハミンからは誕生日プレゼントをもらった。ハミンは何を渡そうかいろいろ悩んだということだった。そして渡してくれたのは僕らの2人の記憶が詰まった写真アルバムだった。
ハミンは旅の途中に、僕らが付き合った最初の日からの写真を切り貼りし、思い出のアルバムを作ってくれていた。
これは反則だ。僕は涙が止まらなかった。
ページをめくる度にハミンとの一緒の時間を思い出し、涙が溢れてきた。
嬉しい。けれど、これからハミンと会えなくなることを思うと切なかった。
2人で思いきり泣いた。
ハミンに祝ってもらう最後の誕生日。なんだか不思議な時間だった。

その数日後には、今度は2人で思い出の場所へ。
ハミンと付き合う前に、僕が誘ってはじめて2人きりでご飯をしたレストラン。そのときと同じ席に座り、一緒の時間を過ごす。
だんだんと僕ら2人の時間が終わりに近づいていることを実感させられる。楽しいような、同時に悲しい時間であった。

そしてまたハミンは旅に出かけた。
雪の北海道から、旅の主目的である瀬戸内海のアートな島々など。
旅の途中にも、ハミンは手紙を送ってくれたりした。

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どうもぉ〜
今わたしは豊島の豊島美術館にいます。
お元気ですかぁ〜〜
ここはすごく豊かな島です! また、この美術館ですごく感動してます。
自然と建築で素敵な空間になって良い刺激を受けてます。
これからも、もっともっと色々見ながら、自分の作品でも人々に良い刺激を与えるようにやっていきたいと思います。
是非翔太も来て欲しいです。
             豊島美術館にいるハミンより

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